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【競売手続③】買受け申出後の不動産の損壊

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不動産競売において最高価買受申出人または買受人が買受けの申出をした後、天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合、手続としてはどのようになりますか。また、「損壊」とは具体的にどのような状態を指しますか。

くり子ちゃん

1 民事執行法75条1項は、最高価買受申出人または買受人は、買受けの申出をした後、天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、執行裁判所に対し、売却許可決定前にあっては売却不許可の申出をし、売却許可決定後にあっては代金を納付する時までにその決定の取消しの申立てをすることができると規定しています。

2 同項の「損壊」は、直接的には、地震、火災、人為的破壊等の物理的損傷を指しますが、物理的損傷に該当しない場合でも、当該不動産の交換価値が著しく損なわれたときや損なわれることが判明したときは、同条を類推適用すべきであるとされています。

3 「損傷」の要件との関係で同項の適用または類推適用を肯定した裁判例としては、以下のものがあります。

①競売不動産について、買受人が引渡しを受けるために第三者および暴力団幹部と折衝する蓋然性が高い場合(東京高裁平成25年7月12日決定)

②競売建物の敷地利用権が公示送達によりされた解除の意思表示により消滅し、建物収去土地明渡しを命ずる判決が言い渡されたことが判明した場合(東京高裁平成22年4月9日決定)

③競売建物(マンションの一室)内に、遺体が4か月放置され腐乱した状態で発見された場合(名古屋高裁平成22年1月29日決定)

④競売建物にシロアリ被害が生じていた場合(ただし、損傷が軽微か否かの判断のため原審差戻し。)(東京高裁平成19年12月7日決定)

⑤競売土地の実測面積が登記簿記載の面積より596.60㎡少ない2811.40㎡であることが判明した場合(東京高裁平成17年7月6日決定)

⑥土地区画整理事業に係る競売土地について、仮換地の指定もまだされていないなど、現時点でも将来においても宅地として使用できるかどうかが不確定な事情が判明した場合(大阪高裁平成13年6月4日決定)

⑦競売土地について航空法49条による建築物の高さ制限がされていることが判明した場合(東京地裁八王子支部平成12年7月6日決定)

⑧競売土地上に今後建物を建築するには1200万円の費用を要する擁壁工事が必要な場合(東京高裁平成11年1月22日決定)

4.「損傷」の要件との関係で、同項の適用または類推適用を否定した裁判例としては、以下のものがあります。

①借地権付き建物の所有者が、競売手続中に敷地所有権を取得し(抵当権が設定されていることから民法179条1項ただし書の類推適用により、混同によって借地権は消滅しない。)、これに伴い、買受人が敷地所有者に借地契約の締結を拒まれた場合(東京高裁平成24年9月28日決定)。

②売却許可決定確定後に競売物件の共有者が競売物件から約2、300m離れた山林内で自殺した場合(仙台高裁平成8年3月5日決定)