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【近隣トラブル⑧】黙示の通行地役権とは?

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私はこれまで隣地の所有者との間で、明確に地役権の設定契約を締結していませんでした。先日、隣地所有者から、今後は通行を禁止すると言われてしまいました。私としては、長年、隣地を通行してきたので、黙示の地役権が成立していると主張したいのですが、認められるでしょうか。

くり子ちゃん

1 【近隣トラブル⑥】で解説しましたとおり、地役権は、原則として、当事者間の地役権設定に関する合意(契約)が必要です。

したがって、隣地所有者との間で明確に地役権設定の合意(契約)がない場合には、原則として、地役権の成立を主張することはできません。

2 もっとも、実務においては、明確に地役権設定の合意がなされないケースは決して少なくありません。

このような場合、「黙示的に地役権の設定契約がなされた」として、明確に地役権設定の合意(契約)をしなくても、地役権の成立が認められることがあります。

黙示の地役権設定の合意が認められるためには、単に通行の事実があり、これを承役地の所有者が黙認しているだけでは足りません

これに加えて、承役地の所有者が、通行地役権を設定し、法律上の義務を負担することが客観的にみて合理性がある場合でなければならないと解されています(東京高判昭和49年1月23日)。

具体例としては、一筆の土地を分譲する際、通路を利用する譲受人に対しその通路敷所有権を分割帰属させるとか、通路敷所有権をもとの分譲者に留保した場合があげられます。

3 この他、40年以上昔の何ら契約書等の証拠もない事案で、幅員51.8センチと70センチの2つの通路があり、外形上合わさって1本の通路になっている事案で、単独では通行に不便であること、もともと一体の土地が分割されたのにその所有者が譲渡にあたり自己の通路を狭い範囲に限定するとは考えがたいことなどから、土地の譲渡時においてお互いに通行地役権を設定したとし推認するのが相当だとする裁判例があります(東京地判平成16年1月27日)。

また、店舗兼居宅の分譲による購入者について、当該通路にはすみ切りがあり、通路の外観が整っていること、駅からの一般通行人の通行が確保されているという状態で購入したこと、そのままの状態で通路の所有者は舗装をし27年以上維持してきたことなどを前提に、法律上の義務を負担することが客観的に合理的であると認められる特別の事情があるとして黙示の通行権を認めた判決があります(東京地判平成20年4月24日)。