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【不動産が絡む相続⑱】遺産分割で取得した土地に土壌汚染が判明した

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遺産分割協議の結果、私は、ある土地を取得したのですが、その後、その土地の土壌を調査したところ、有害物質に汚染されていることが判明しました。どうしたらいいでしょうか。

くり子ちゃん

1 遺産分割の対象となった土地に、遺産分割時には明らかになっていなかった土壌汚染が判明した場合、民法570条にいう「瑕疵」にあたるかが問題となります。

この点、裁判例では、土壌汚染の程度が行政上の規制基準値を超える場合には瑕疵に当たるとされています(東京地判平成18年9月5日、東京地判平成20年7月8日)。

これに対し、最高裁は、売買契約の目的物である土地の土壌に、規制対象となったふっ素が基準値を超えて含まれていた事案において、「売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては、売買契約締結当時の取引観をしんしゃくして判断すべき」とした上で、「本件売買契約締結当時の取引観念上、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されていなかったふっ素について、本件売買契約の当事者間において、それが人の健康を損なう限度を超えて本件土地の土壌に含まれていないことが予定されていたものとみることはできず、本件土地の土壌に溶出量基準値及び含有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていたとしても、そのことは、民法570条にいう瑕疵には当たらない」と判示しました(最判平成22年6月1日)。

以上の判例からすると、遺産分割の対象となった土地が、法令で定められた基準値を超える有害物質で汚染されていたということであれば、民法570条の「瑕疵」に当たるものと回されます。

もっとも、遺産分割時においては当該物質が法令の規制対象となっておらず、当該物質が土壌に含まれることによって人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されていなかったような場合には、「瑕疵」に当たらないとされる可能性もあります。

2 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、その相続分に応じて、売主と同様の担保責任(民560条~572条)を負います(民911条)。

したがって、本件土地の土壌汚染が民法570条の「瑕疵」に当たる場合には、他の共同相続人に対し、各自の相続分に応じて損害賠償請求をすることができます

瑕疵担保責任による損害賠償の範囲については、多くの裁判例は、信頼利益(瑕疵がないと信頼したことによる利益)に限られ、履行利益(完全な給付がなされたら得たであろう利益)の賠償ではないという立場を採っています(仙台高判平成12年10月25日、名古屋地判平成18年2月24日、東京地判平成22年12月22日)。

3 瑕疵担保責任として、遺産分割の解除が認められるかについては見解が分かれています。

判例上、債務不履行による遺産分割の解除が認められていない(最判平成元年2月9日)こととパラレルに考えるのでしたら、瑕疵担保責任による遺産分割の解除も認められないことになります。

4 代金減額請求は、条文上も判例上も認められていません(最判昭和29年1月22日)。

5 損害賠償請求(及び解除権の行使)は、基準値を超える土壌汚染の存在を知った時から1年以内にする必要があります(民911条、570条、566条3項)。

なお、上記期間内に、他の共同相続人に対し、担保責任を追及する旨を明確に告げれば足り、裁判上の権利行使までは要しません(最判平成4年10月20日)。