ホーム > 不動産問題Q&A > 建築紛争 > 【建築紛争⑩】名義貸しをした建築士の責任

【建築紛争⑩】名義貸しをした建築士の責任

Pocket

建築申請を行う際に、工事監理については引き受けておらず、実際に工事監理をしないのに、確認申請書に工事監理者欄に自分の氏名を記載した建築士は、建築瑕疵の責任を負いますか。

くり子ちゃん

1 ご質問いただいた点については、最判平成15年11月14日が参考になりますので、ご紹介いたします。

建築士は、その業務を行うに当たり、新築等の建築物を購入しようとする者に対する関係において、建築士法及び建築基準法の上記各規定による規制の潜脱を容易にする行為等、その規制の実効性を失わせるような行為をしてはならない法的義務があるものというべきであり、建築士が故意又は過失によりこれに違反する行為をした場合には、その行為により損害を被った建築物の購入者に対し、不法行為に基づく賠償責任を負うものと解するのが相当である。

「上告人の代表者であり、一級建築士であるAは、・・・建築確認申請書にAが本件建物の建築工事について工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をしたのであるから、Aには、自己が工事監理を行わないことが明確になった段階で、建築基準関係規定に違反した建築工事が行われないようにするため、本件建物の建築工事が着手されるまでに、B株式会社に工事監理者の変更の届出をさせる等の適切な措置を執るべき法的義務があるものというべきである。ところが、Aは、・・・何らの適切な措置も執らずに放置し、これにより、B株式会社が上記各規定による規制を潜脱することを容易にし、規制の実効性を失わせたものであるから、Aの上記各行為は、上記法的義務に過失により違反した違法行為と解するのが相当である。」

なお、本件控訴審は、本判決と同じく建築士法18条1項の誠実義務(配慮義務)は建売用建物の購入者に対しても負担するとして不法行為責任を認め、その一方で「義務違反」と相当因果関係がある損害の範囲は「本件ほど著しい手抜工事が行われるのはあまり例のない事態であり必ずしも容易に予見できたとまでは言い難いこと」「B株式会社において正当に工事監理者の変更手続をして工事をしているであろうと考えたとしてもある程度やむを得ないこと」などを考慮して被った損害の1割の範囲において賠償金を認めました。

2 同様に、建売住宅のケースで、名義貸しをした建築士の不法行為責任を認めたものとして、大阪地判平成10年7月29日、大阪地判平成12年6月30日、大阪地判平成12年10月20日、大阪高判平成13年11月7日などがあります。