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【不動産売買⑮】設計者・施行者・工事監理者の責任

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設計や施工が不完全であり、それにより損害が生じた場合、設計者・施行者・工事監理者はいかなる要件の下で責任を負いますか。

くり子ちゃん

1 設計者に設計を依頼し、あるいは、施工会社に工事を請け負わせて工事を完成させたにもかかわらず、設計や施工が不完全であって損害が生じた場合には、依頼者・発注者は、債務不履行や瑕疵担保に基づき、設計者・施工会社に対して損害賠償を請求できる。これらは設計者・請負人の契約当事者としての責任です。

これに対し、設計の依頼者や工事の発注者ではなく、完成した建物を中古で購入した者には、設計者・請負人との間に契約関係がないため、このような場合には、不法行為責任が問題となります。

最高裁は、設計者・施工者の不法行為責任について、「建築された建物に建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵があり、それにより居住者等の生命、身体または財産が侵害された場合には、設計・施工者等は、不法行為の成立を主張する者が瑕疵の存在を知りながらこれを前提として建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り、これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負うというべきである。居住者等が建物の建築主からその譲渡を受けた者であっても異なるところはない」と判示しています(最判平成19年7月6日)。

2 この最高裁の考え方によれば、設計者・施工者が第三者に対して責任を負うのは、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」がある場合であり、建物に瑕疵があっても、建物の基本的な安全性が損なわれるには至らない程度の瑕疵に過ぎない場合には、設計者・施工者が第三者に対して責任を負うものではありません(東京地判平成20年8月29日)。

では、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは具体的にどのような意味なのでしょうか。

この点、最高裁は、「『建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵』とは、居住者等の生命、身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、建物の瑕疵が、居住者等の生命、身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず、当該瑕疵の性質に鑑み、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当すると解するのが相当である」と判示しています(最判平成23年7月21日)。

この最高裁の考え方によれば、「当該瑕疵を放置した場合に、鉄筋の腐食、劣化、コンクリートの耐力低下等を引き起こし、ひいては建物の全部又は一部の倒壊等に至る建物の構造耐力に関わる瑕疵はもとより、建物の構造耐力に関わらない瑕疵であっても、これを放置した場合に、例えば、外壁が剥落して通行人の上に落下したり、開口部、ベランダ、階段等の瑕疵により建物の利用者が転落したりするなどして人身被害につながる危険があるときや、漏水、有害物質の発生等により建物の利用者の健康や財産が損なわれる危険があるときには、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当するが、建物の美観や居住者の居住環境の快適さを損なうにとどまる瑕疵は、これに該当しない」ことになります(同最高裁判決)。