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【建築紛争⑮】過失相殺

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建築紛争において、裁判所は、どのような事情があると、過失相殺の対象としているのか教えてください。 

くり子ちゃん

1 一般的な過失相殺がされた事案

➀大阪地判昭和61年10月30日

隣接地の工事に関する損害賠償について、隣接地建物の傾斜等の発生拡大について、隣接地建物所有者の増築建物に際し基礎杭を打設せずベタ基礎の状況で施工したことが重要な要因であるとして過失相殺の法理の趣旨から3割5分を減じた。

➁長野地判昭和55年1月24日

ガス風呂入浴中の死亡事故について、建築瑕疵による請負人の過失として損害賠償を認定したが、被害者が窓を閉め切って換気に注意しなかった過失があるとして、過失相殺として2割を減じた。

2 売買ないし工事に当たって施主側の態度が問題とされた事案

➀熊本地判平成10年1月19日

原告は大工工事が始まってから間もなく、建築確認申請の添付図によって施工がされていないことに気づき、建築事務所代表者の親戚、訴外大工に建築確認申請の添付図面のコピーを交付し、その後も施工が建築確認申請の添付図面のとおりにされているか当然関心があったと考えられるが、大工工事が終了するまでの間、その点を確認する機会があったのにそれをした形跡がないこと、本件建物瑕疵については添付図面によって施工がなされているかどうかを確認協議すれば解消されたものも少なくなく、再築せざるを得なくなった程度に被害が拡大したのは原告にも斟酌すべき事情があるとして、過失相殺として3割を減じた。

➁大阪地判平成11年6月30日

新築売買の事案において、原告が売買契約の締結にあたり建物の構造上の安全性について点検・調査するのに十分な時間と機会を有していたにもかかわらず、これを怠ったとの主張について、本件各建物の瑕疵がいずれも建築の専門家でない通常人が普通の注意を用いても発見できない隠れた瑕疵にあたるものであるから、売買契約の手続にあたり原告には何らの落ち度もないとして過失相殺の主張を認めなかった

➂大阪地判平成13年2月15日

被告の標準仕様書では防火上の安全性に関する費用を免れていたこと、違法な小屋裏物置は原告の希望に基づき設置したこと、その他の事情から当事者の公平な損害の分担をはかるため、過失相殺として3割を減じた。

3 過失相殺等と同様の趣旨を含む判断がされた事案

➀京都地判平成10年6月16日

再築代金全額の損害を認定しつつ、これを上回る諸費用(慰謝料、弁護士費用等を含む。)については、原告が被告が建設業の許可を受けておらず建築士の資格もないことについて何らの調査もせず安易に被告との間で新築工事請負契約を締結したことが本件損害発生にある程度影響を及ぼしていることをもって、再築代金全額を上回る部分についての損害は認められないとした(なお、控訴審大阪高判平成11年9月30日も維持)。